MBTIとソシオニクスの違い
ソシオニクスは1970~80年代にリトアニアの社会学者・経済学者であるAshra Augustaによって開発されました。
その目的は、人間関係と個人のタイプがどのように相互作用するかを緻密に示すことでした。
この理論はユングの認知機能の理論だけでなく、情報代謝(information metabolism)と呼ばれる理論にも基づいています。
ソシオニクスの基本的な前提はMBTIと同じです。
しかし、ソシオニクスをMBTIとは異なるものにしているいくつかの側面があります。
①ソシオニクス:エゴブロック、MBTI:機能スタック
最も明白な違いは機能スタックです。
MBTIによると、私たちは4つの主要な機能のスタックを持っています。
例えばINFJは下記の機能スタックを持ちます。
Dominant Function:内向的直観 (Ni)
Auxiliary Function:外向的感情 (Fe)
Tertiary Function:内向的思考 (Ti)
Inferior Function:外向的感覚 (Se)
MBTIの専門家の間では、残りの4つの機能(INFJの場合はNe、Fi、Te、Si)が個人にどのように影響するかについて意見が一致していません。
John Beebeは各タイプの8機能モデルを作成しましたが、オンラインではその信憑性について意見が割れています。
ソシオニクスでは、8つの機能すべてを詳細に使用する方法について説明しています。
ソシオニクスはこれらの機能を4つの異なるブロックに分けています。
以下の図で、機能スタックの違いを見ることができます。
ソシオニクスの機能スタック(INTJ)
自我 (強い・評価されている) |
①Ni | ②Te |
超自我 (弱い・抑圧されている) |
④Fe | ③Si |
超イド (弱い・評価されている) |
⑥Fi | ⑤Se |
イド (強い・抑圧されている) |
⑦Ne | ⑧Ti |
※機能の名称
①Leading
②Creative
③Vulnerable
④Role
⑤Suggestiv
⑥Mobilizing
⑦Ignoring
⑧Demonstrative
MBTIの機能スタック(INTJ)
① Dominant | Ni |
② Auxiliary | Te |
③ Tertiary | Fi |
④ Inferior | Se |
⑤ | Ne |
⑥ | Ti |
⑦ | Fe |
⑧ | Si |
ソシオニクスの特徴の一つは、機能が「スタック」としてではなく「ブロック」として一緒に働くということです。
機能はそれ自体では成り立たちませんが、対になって働きます。
例えば、主要な機能(leading)と創造的な機能(creative)(MBTIのdominant、auxiliary function)は同じブロックにあります。それは「自我(ego)」です。
そのようなブロックは4つあります。
自我、超自我、イド、超イド。
各ブロックには2つの機能が含まれており、各ブロックは異なる態度とアプローチを持ちます。
それらを簡単に見るために、それらを強いブロック(自我とイド)と弱いブロック(超自我と超イド)、そして評価されたブロック(自我と超イド)と抑制されたブロック(イドと超自我)に分割できます。
強いブロックの機能は簡単に扱うことができます。
弱いブロックの機能を扱うには助けやアドバイスが必要です。
ある機能が評価されている場合はそれが優先され、それが抑制されている場合は優先度は低くなりますが、抑制されていても強力な場合があります。
例としてINTJを使用すると、Ni(自我ブロック)は評価されている機能であり、抑制されたNe(イドブロック)と比較して、Niの方が強く好まれます。(しかしNeは強いブロックにあります)。
自我は強くて評価されていることがわかります。
私たちはそれを気にし、そしてそれを得意としています。
私たちはそれらに慣れ親しみ、容易に扱う事ができます。
もう一方の強いブロック、イドは抑えられています。
このブロックの機能にアクセスするのは簡単ですが、それらをあまり気にせず、それらの価値を無視することもあります。
弱いブロックの1つ、超自我は私達がアクセスするのが困難で、さらに苦痛を伴うものです。
技術的には、このブロックに対する支援が必要ですが、誰かがそれを指摘すると私たちはしばしばイライラするかもしれません。
私たちはこの分野の弱点を非常に意識しています。
一方、超イドは、評価されているけど弱いブロックです。
私たちはこれらの機能についての助けとアドバイスを求めます。
言及すべき1つのことは、John Beebeが「影の機能」と呼ぶものと、ソシオニクスにおける2つの抑圧されたブロック(イドと超自我)の比較です。
「影の機能」は、イドや超自我とは非常に異なる方法で記述されています。
John Beebeによると、影の機能は「通常の」スタックの影ですが、ソシオニクスでは、抑圧されたブロックは、単に抑圧された、評価されていない各機能の代替手段です。
機能のさまざまな位置における記述方法にも重要な違いがあります。
例えば、MBTIのinferior functionとソシオニクスの暗示する機能(suggestive)は異なる方法でアプローチされます。
前者では、dominant functionとの衝突により拒絶やストレスを感じさせる機能ですが、後者では、私たちの主要な機能を補完するものとされています。
②機能の定義
第2の大きな違いは、それらが認知機能(Ni、Ne、Si、Se)をどう説明するかです。
ここでは、各機能がソシオニクスでどのように記述されているか(およびユングがそれらを記述した方法との関係)について詳しく説明します。
ソシオニクスの心理機能
すべてのユング派のタイプ論は、4つの機能(感情・思考・感覚・直観)と2つの態度(外向・内向)に基づいています。
ユングは8つの異なるタイプについて話しました。
一方、MBTIとソシオニクスのには16タイプあり、すべて4つの機能に基づいています。
しかし、双方の機能の概念はわずかに異なる方向で開発されました。しかし、どちらもユングが書いたものと概して一致しています。
外向的直観(Ne)
ユングによる外向的直観は、主観的な無意識に触れるのではなく、外部の物事の可能性と潜在性や、客観的評価に焦点を当てます。
MBTIのNeは、アイデアと可能性に焦点を当てます。
そのため、アイデアから生じる可能性は小さな流れで始まり、大きな海になります。
典型的な例はブレーンストーミングであり、これはあらゆる角度から何かを検討することです。
ソシオニクスでは、Neは可能性への評価として発展しました。
これは対象が持つ可能性を理解するために、対象または人の内部の「本質」を理解することです。
MBTIと同じように、隠れた扉を開くことを検討しながら、さまざまな選択肢や視点を検討することも重要とされています。
内向的直観(Ni)
ユングの内向的直観は、アーキタイプ(原型)と密接に関係します。
内向的な機能はすべて非具体的で非現実の知覚に焦点を当てますが、Niはそれらの知覚と特に密接に関連し、また集合的無意識と関連しています。
内向的直観は直観的なデータの認識であり、そのデータは集合的無意識とアーキタイプによって処理されます。
そして、この結果フィルタリングされた情報は、Niが焦点を当てているものです。
MBTIでは、NiはNeと対照的に収束的機能に発展しました。
無意識のうちに外部の具体的データを見つけ出し、それからパターンを結びつけて、やがて単一のアイデアやポイントに至るものです。
拡大鏡の機能として見られています。
無意識のうちに、そして直感で自身を表現します。
ソシオニクスでは、Niは発展と時間の変化、出来事がどのように相互に関連しているか、そして物事の時機に関わります。
ある出来事が他の出来事の後どのように続くのか、どう展開されるのかを予測します。
出来事とその時間軸での位置に焦点を当てるものとされています。
外向的感覚(Se)
ユングの外向的感覚は、外部データの客観的知覚です。
それは人の最も「生」の認識であり、現実的かつ客観的なものだけに焦点を当て、主観的な側面はすべて抑制します。
対象の物理的側面への知覚です。
MBTIのSeは、五感・衝動性に焦点を当てると説明されます。
現時点と具体的な現実に焦点を当てます。
まず第一に、ソシオニクスが外向的感覚を説明する方法の背後にある考え方を理解するために、私たちは感覚(S)を理解すべきです。
この機能では、「スペース(space)」という言葉が使用されることがあります。
感覚(S)の外向的側面は、人に「属する」空間を理解し、そしてこれをどのように拡張または防御できるかです。
それは力、影響、どれだけのスペースを得るかです。
また、すべてをスペースの衝突として認識します。
内向的感覚(Si)
ユングによる内向的感覚は、現実性の主観的印象です。
対象自体の印象に焦点を当てるため、印象主義の芸術として形容されます。
しかし、それはアーキタイプと対象を結び付けるのではなく、印象に焦点を当てるという点でNiとは異なります。
MBTIのSiは、内向性と感覚に焦点を当てるため、物事を過去の経験に結び付けることに重点が置かれるようになりました。
それは組織的であるとも見なされます。
これと同様に、Siは詳細指向で、過去の経験に焦点を当てるため、慣習的なものとされます。
しかし、ソシオニクスでは内向性の解釈が異なり、内向性は他の機能を通しても見ることができるとされるため、説明が異なります。
Siは内向的であるというよりは、外部の対象と自身の間の関係として理解されています。
このため、Siは外部の何かがその人に持っている印象や、自身が対象についてどう感じるかに関わります。
それは、快さに重点を置き、経験の質に関係しています。
外向的感情(Fe)
ユングの外向的感情は、何かが良いかどうかを主観的な感情ではなく客観性に基づいて評価することに関するものです。
主観的と見えるかもしれないとしても、結局これは感情機能であり、対象の評価のために外的に存在するものだけを使用し、すべての主観的要素を取り除きます。
しかしながら、外向的感情は決して偽物ではなく、主観的なものを無視し抑圧し、単に外部の性質に基づいて評価を下すだけです。
MBTIのFeは、他人の感情を理解することに関わり、しばしば共感を持つことと同等なものです。
それは、状況の雰囲気を変え、人々を助け、周囲を幸せにするために周囲を整理することです。
どの感情的なボタンを押すべきかを理解し、感情的に人々に訴求する方法を理解することです。
繰り返しますが、ソシオニクスを理解するためには、ソシオニクスが感情そのものについてどう定義しているかを理解しなければなりません。
感情(F)はエネルギーと呼ばれ、それはエネルギーの状態、人のレベルです。
Feは、これに対する客観的な理解であるため、他の人や状況が存在する状態、およびこれをどのように変更できるかに関わります。
また、エネルギーの状態がどのように、なぜ変化するかについても非常に敏感です。
内向的感情(Fi)
ユングによると内向的感情は深さに関わります。
彼はFiを持つ人を説明するために「水が深く流れる」というフレーズを使いました。
それは、外界と関係するのではなく、内側の像と理想の現実化に関わります。
MBTIでは、それは真正性とあなた自身の道徳的なコンパスを作成することに関わります。
自身に忠実であり、偽物ではないことです。
Fiは内なる、主観的な価値観に関わります。
ソシオニクスでは、Fiは「エネルギーとしての感情を説明する方法」と「内向性」の組み合わせです。
Fiは、2つの異なるエネルギー状態、2つの異なる人々間の関係の「距離」と「性質」に注目しています。
二つのエネルギー状態間の比較です。
外向的思考(Te)
ユングの外向的思考は、外部の事実に関するものです。
主観的要因を無視しようと、内向的感情を抑えます。
MBTIでのTeは計画、実行、効率性、物事を扱うことに関わります。
非個人的かつ客観的で、システムの構築と外部環境の組織に関します。
大胆で、物事を実行します。
ソシオニクスでのTeは、効率性、実用性に焦点を当て、ビジネスおよび客観的論理に関わります。
それは物事の事実上の正確性に焦点を当てており、非常に実際的です。
内向的思考(Ti)
ユングの内向的思考は、内向的感情と同じように集合的無意識に基づいており、外部の事実と相関するのではなく、個人の主観に由来する理論に焦点を当てます。
ある事実が、自身の理論やアーキタイプ的な考えと一致しないのであれば、それは重要でないと考えます。
MBTIのTiは、物事の正確性に関係します。
それはシステムの作成に焦点を当てるのではなく、システムの完璧な完成に焦点を当て、システムの欠陥を発見します。
それは論理的な一貫性と、世界を理解するための知識のウェブの作成に焦点を当てます。
ソシオニクスのTiは、システムと対象間の関係に焦点を当てます。
構造、階層、物事がどのように組み合わさるか、何かがより大きなパターンや構造にどのように収まるかは、すべてTiの一部です。
システムの一貫性とグローバル性に焦点を当てます。
③タイプグループ
第3の大きな違いは、タイプがどのようにグループ化されているかです。
心理学者のデイビット・キアジーは、タイプを気質に分類したことで有名です。
気質とは、守護者(SJ)、理想主義者(NF)、芸術家(SP)、合理主義者(NT)です。
これらのグループ化、ならびにMBTIのSF、ST、NF、NTのグループ化は、最も一般的な分類です。
しかし、ソシオニクスは、MBTIに慣れている人の目から見れば、慣れない、直感に反するようなものかもしれません。
ソシオニクスはタイプを4つの「クアドラ」に分類します。
各クアドラは、同じ4つの機能を共有する4つのタイプから構成されています。
ガンマクアドラ:INTJ、RNTJ、ISFP、ESFP(自我・超イドにNi、Se、Te、Fiを持つ)
ベータクアドラ:ENFJ、INFJ、ESTP、ISTP(自我・超イドにNi、Se、Ti、Feを持つ)
アルファクアドラ:ESFJ、ISFJ、RNTP、INTP(自我・超イドにNe、Si、Fe、Tiを持つ)
デルタクアドラ:ESTJ、ISTJ、ENFP、INFP(自我・超イドにNe、Si、Te、Fiを持つ)
では、なぜMBTIとソシオニクスで異なるグループ化をするのでしょうか。
デイビット・キアジーにとって、それは経験的観察の問題でした。
彼には、SJ、SP、NT、NFがそれぞれ同じように振る舞っているように見えました。
一方、クアドラは共有されている機能に基づいてグループ化されています。
④相性論
4つ目はの違いはタイプ間の関係の理論です。
MBTIはタイプ間の相性について提言していません。
ソシオニクスは、関係の相性に関してはMBTIをはるかに超えています。
それは非常に数学的なアプローチを使ってこれを行います。
単にタイプ(例えばENTJ)を取りありげるのではなく、あるタイプに最も相性の良いタイプ見つけると、異なる位置の機能がどのように見えるか、そしてそれらが2つのタイプの間でどのように相互作用するかに基づいて各タイプ間の関係を調べます。
これには、「ベストマッチ」も含まれ、すべてのタイプ同士の関係が説明されています。
⑤機能と情報要素(Information Elements)
MBTIが心理機能と呼んでいるもの(Ni、Neなど)は、ソシオニクスでは厳密には「情報要素」と呼びます。
これは、ユングの心理機能の概念と組み合わされた情報代謝の理論から来ています。
大きな違いはありませんが、私たちの2つのシステムの見方に影響します。
MBTIでは、機能は脳内のプロセスであり、あなたが「使用する」ものです。
ソシオニクスでは、情報要素はそれ自体は一種の情報であり、情報要素のスタック内の位置は、それがどのようにアプローチされ使用されるかに関わります。
MBTIとソシオニクスの間には多くの違いがあります。
一つは戦後のアメリカでビジネスの世界のために母親と娘によって開発され、もう一方は社会学者と経済学者によって開発され、それは関係を説明するためのシステムの構築のためでした。